「プロのアーティストって、どんな風に曲を作ってるんだろう?」ということが気になっている人へ。
そんな人におすすめなのが、プロのアーティストのDAWプロジェクトファイルが手に入るWebサイト「Splice Community」です。
この記事では、このSplice Communityについて、その概要やメリットから使い方まで徹底的に解説します。
この記事は、DTM歴7年で楽曲のリリース経験もある現役トラックメイカーDTM部長(@dtmbu)が書いています。
- Splice Communityとは?何ができるサイト?
- Splice Communityの使い方は?
Contents
Splice Communityとは?
「Splice Community(スプライス・コミュニティ)」とは、自分の楽曲やDAWのステムデータ、DAWのプロジェクトファイルなどを公開して共有できるサービスです。
アマチュアに限らず、プロのアーティストのステムデータなども公開されており、誰でも自由にダウンロードして手に入れることができます。
ニューヨークのDistributed Creation社が運営している「Splice(スプライス)」のサービスのひとつで、Spliceのサービスは他にも以下のようなものがあります。
- Splice Sounds(サンプル音源)
- Splice Plugins(プラグイン)
- Splice Studio(プロジェクトファイル)
- Splice Community(データ共有)※本記事
この記事では、この中からデータ共有サービスの「Splice Community」について解説していきます。
Splice Communityで公開されているファイルは、以下の3種類があります。
- トラック(Wav)
- ステムデータ(Wav)
- DAWプロジェクトファイル
ステムデータとは、オーディオトラックをDAW上で編集しやすくするために、複数のトラックをグループ化してまとめたものです。
たとえば、
- ドラム(キック・スネア・ハット)で1ステム
- シンセ(リード・パッド)で1ステム
みたいな感じで、個別のトラックパラアウトと違って、ある程度グループ化して録音されたオーディオファイルです。
Splice Communityを使うメリットは?
Splice Communityでどんなことができるのか、利用するメリットについて、もう少し具体的に解説します。
- ブラウザで人の楽曲のステムデータが見れる
- DAWのプロジェクトファイルが無料で手に入る
- コンテストに応募できる
① ブラウザで人の楽曲のステムデータが見れる
先ほど紹介した通り、Splice Communityでは、ブラウザから公開されている楽曲のステムデータを検索して自由に見ることができます。
ということは、他の人が作った楽曲の構成や展開がどんな風に組み立てられているのかを知ることができる訳です。
Splice Communityで公開されているステムデータは、Spliceのユーザー登録(無料)をすれば、無料でダウンロードすることができます。
② DAWのプロジェクトファイルが無料で手に入る
ステムデータだけではなく、DAWのプロジェクトファイルも公開されているので、ダウンロードして自分のDAWで開けば、音作り、ミキシング、マスタリングの工程を全て見ることができます。
対応しているDAWは以下の通りです(2020年5月時点)。
- Ableton Live
- Logic
- FL Studio
- GarageBand
③ コンテストに応募できる
Splice Communityでは、作曲ワークフローの共有だけでなく、オリジナル楽曲やリミックスなどのコンテストも行われています。
もちろん応募は無料で、グランプリに選出されると、レーベルからのリリース権が与えられるなどのチャンスがあります。
定期的にコンテストを行っている貴重なメディアのひとつなので、ぜひ参加して夢をつかんでください。
Splice Communityを使う上での注意点は?
次に、Splice Communityを実際に使ってみて感じた、注意すべき点について説明します。
- プロジェクトファイルを見るためにはプラグインが必要
- データが揃っていないプロジェクトもある
① プロジェクトファイルを見るためにはプラグインが必要
DAWプロジェクトファイルを自分のDAWで開くときに、プロジェクトで使われているプラグインを持っていないと、完全な形で楽曲を再現することはできません。
プロジェクトファイルがそのまま公開されているので、当然ながら、プラグインのパラメータ値を見ようと思えば、そのプラグインが必要になります。
② データが揃っていないプロジェクトもある
Splice Communityに公開されているプロジェクトの中で最も多いのが、完成曲の音声データだけが公開されているパターンです。
また、MIDIデータはあるけど、ステムだけが無いものなど、不完全なプロジェクトもあったりします。
その場合は、検索メニューの「Most Popular」でソートすることで、「Official Content」と書かれた、Splice公式のプロジェクトが優先的に表示されてきますので、そちらをチェックしてみてください。
Splice Communityの始め方は?
さっそくSplice Communityを試してみたい!という人のために、始め方を紹介していきます。
Splice Communityを利用するためには、Spliceのユーザー登録が必要になります。
まず、Splice CommunityのWebサイトにアクセスします。
はじめに、Spliceのユーザー登録(無料)が必要になりますので、[Sign Up]をクリックします。
ユーザー名、本名orアーティストネーム、メールアドレス、パスワードを入力したら、[I agree to Splice’s Terms & Privacy Policy(規約に同意する)]にチェックを入れてユーザー登録完了です。
入力したメールアドレス宛に確認メールが届きますので、メール本文にあるリンクボタンの[Confirm Email(確認)]をクリックします。
これで、Splice Communityを利用する準備が整いました。
Splice Communityの使い方は?
Splice Communityの使い方はとっても簡単です。手順にそって解説します。
- プロジェクトの検索
- ダウンロード
- コンテストへの応募方法
① プロジェクトの検索
Splice CommunityのWebサイトにアクセスして、先ほど作成したアカウントにログインします。
画面左上にある、[Explore(検索)]をクリックすると、公開されているプロジェクトの一覧が表示されます。
DAWのプロジェクトファイルを探す場合は、検索メニューから自分のDAWを選択します。
例えば、ここでは「FL Studio」を選択してみます。
試聴して気になるプロジェクトが見つかったら、クリックして詳細画面に移動します。
② DAWプロジェクトファイルを開く
プロジェクト詳細画面では、プロジェクトファイルの楽曲構成のプレビューが表示されています。
ステムデータの場合は、オーディオ波形も見ることができますが、DAWのデータの場合は以下のような感じでMIDIクリップの配置だけが表示されます。
この画面下部にある、[SPLICE THIS PROJECT]をクリックします。
さらに次の画面で[Open In ※]をクリックします。
※の部分には、選択したDAWの名前が表示されています。
するとDAWが自動で起動して、プロジェクトファイルを開きます。
このとき、開いたプロジェクトの中で、自分が所有していないプラグインが使われている場合は、完全な形で開くことができません。
② コンテストへの応募方法
実施中のコンテストを探すには、Splice CommunityのWebサイトにアクセスして、画面左上のメニューから、[Contests]をクリックします。
すると、開催中および終了した過去のコンテストの一覧が表示されます。
この記事を書いているタイミングでは、残念ながらエントリー受付中のコンテストはありませんでしたので、過去のコンテストの結果を見てみます。
こちらのコンテストの内容は、リミックス課題でした。終了したコンテストであっても、課題用の素材をダウンロードすることができます。
入手するには、[GET THE FILES]をクリックします。
[I agree]にチェックを入れて、[Download the project]をクリックします。
こちらはAbleton live 9のプロジェクトファイルとして配布されていますので、Abletonをお持ちの人は[Open in Ableton]をクリック。
持っていない人は、ステムデータだけをダウンロードできます。
[Open In Ableton]をクリックしてAbleton liveが起動した後の画面がこちらです。
ステムデータが曲の展開に合わせて並べられているので、このままリミックス作業に取り掛かることができます。
Splice Communityのおすすめプロジェクト
私がSplice Communityでプロジェクトをサーチしていて、「これは良いな~!」と思ったプロジェクトを参考までにいくつか紹介しておきます。
Pendulum “Granite” Remix Contest
ドラムンベース界の覇者、「Pendulum(ペンデュラム」の楽曲「Granite」のリミックスコンテスト用のステム素材です。
無料でPendulumの高音質なWAVデータが手に入るだけでお得ですね。
https://splice.com/PendulumOfficial/granite
Marshmello – Alone (Stems)
フューチャーベースを有名にしたアーティスト「Marshmello(マシュメロ)」の代表曲「Alone」のステムデータです。
トラック数が多いので、ステムというよりほとんどパラアウトです。これからEDMを作りたい人にとって、非常に参考になると思います。
https://splice.com/marshmello/alone-contest
KASKADE, BROHUG & Mr. Tape “FUN ft. Madge” Remix Contest
ハウス界のレジェンド「KASKADE(カスケード)」のリミックスコンテスト用のステム素材です。
こちらもダンスミュージックの曲の構成を知りたい人にとっては、とても有益なプロジェクトです。
https://splice.com/ArkadeMade/fun-remix
Ed Sheeran & Khalid – Beautiful People (Nalestar Deep House Cover)
日本でも有名な「Ed Sheeran(エド・シーラン)」と「Khalid(カレド)」のコラボ曲「Beautiful People」のリミックスです。
こちらはリミックス作品のため、本人によるプロジェクトではありませんが、クオリティが高いのでおすすめです。
https://splice.com/nalestar/beautifulpeople
KSHMR ft. Sidnie Tipton – House of Cards (RaveUp Mix)
DJ界隈ではとても有名な「KSHMR」のトラック「House of Cards」のリミックストラックです。
こちらも人気のあるプロジェクトなので、とてもおすすめです。
https://splice.com/LucioAdaime/ksmr-ft-sidnie-tipton—house-of-cards-raveup-mix
まとめ
Splice Communityとは何か、そのメリット・デメリットや具体的な使い方について解説しました。
この記事で解説した内容のポイントをまとめると、以下の通りです。
- Splice Communityとは、DAWプロジェクトファイルなどを共有できるサービス。
- 無料でDAWのプロジェクトファイルが手に入る。
- プロのアーティストの楽曲から制作のコツが学べる。
- リミックスなどのコンテストにも応募できる。
Splice Communityは、音楽制作の方法を学ぶために、とても参考になる便利なツールです。
まだ始まったばかりで知らない人も多いサービスのため、コンテンツの数こそまだ少ないですが、一度利用してみる価値は大いにあります。
ぜひ、一度試して、自身の音楽制作のスキルアップを図ってみてください。
ちなみに、Spliceの他のサービスも、おすすめなので、ぜひ合わせてチェックしてみてください。