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DAWソフト6種類の音質を比較検証。一番音が良いDAWはどれ?

DAWソフト6種類の音質を比較検証。一番音が良かったのはどれ?

DAWソフトによって音質って違うの?」という疑問は、誰もが一度は考えたことがあると思います。

ネット上でも「このDAWは音が良い!」みたいな話題が飛び交っています。

ただし、実際に比較検証されている記事などは、あまり見かけたことがないな~と思いました。

そこで、DTM歴7年の現役トラックメイカー(@dtmbu)が、代表的なDAWソフトの音質を比較評価してみました。

その検証結果をシェアしたいと思います。

この記事で分かること
  • DAWソフトによって音質って違うの?
  • 音質が良いのはどのDAW?
  • 音が違うとしたら、なぜ違いが生まれるの?

DAWソフトの音質比較:検証内容

DAWソフトによって音の違いが生まれるのか、実際にパソコンとDAWを使って実証実験を行いました。

主観的な意見ではなく、なるべく、客観的な根拠を示したいと思います。

検証したいこと

今回の検証によって、確かめたかったのは、以下のような内容です。

  1. DAWのバウンス音を比較して違いがあるか。
  2. プラグインの出音に違いがあるか。
  3. パンを振った時の出音に違いがあるか。

DTM部長
DTM部長
バウンス機能というのは、DAW内のトラックをWAVやMP3などの音声データとして書き出すことです。

検証に使用したDAWソフト

今回、比較検証に使用したDAWソフトはこちらです。

検証に使用したDAWソフトとバージョン
  1. Cubase Elements 10.5
  2. ProTools First 2019.5.0
  3. Ableton live 9.7.7
  4. FL Studio 12.4.1
  5. Studio one prime 4.6.0
  6. Digital performer 10.11

パソコンのスペック

検証に使用したパソコンのスペックは以下の通りです。

OSWindows 10
CPUIntel Core i7-6700K(4.20GHz)
メモリ32GB DDR4 SDRAM (16GBx2)

バウンス設定

DAWソフトの書き出しの設定は、以下の通りです(全DAWソフトで統一)。

フォーマットWAVEファイル
サンプルレート44.1kHz
解像度24bit

DAWソフトの音質比較:検証結果

それでは、それぞれの方法での検証結果を報告していきます。

検証内容
  1. バウンス音を比較
  2. プラグインの出音を比較
  3. パンニング音を比較

① バウンス音を比較

まずは同じパラアウト音源から作成した2mixの再生音を比較してみました。

検証の手順は、以下の通りです。

  • Ableton Liveで検証用のデモ曲(10トラック構成)を作成。
  • 全トラックをAbletonのバウンス機能を使い、WAV(24bit、44kHz)で書き出し。
  • 書き出した個別のパラアウトWAVデータを、それぞれのDAWソフトで読み込み、バウンス機能を使って2mixを書き出し。
  • WAVデータの位相を反転させて、それぞれを比較。

デモ曲の2mixはこんな感じで、ドラム、シンセ、ボーカルを使って、ダンス調のポップスを作りました。

さっそく結果ですが、位相反転して比較すると、全ての2mixどうしで音が完全に打ち消されました。

つまり、どのDAWソフトでもバウンス音は同じということになります。

では、「このDAWソフトは音がいい!」というウワサはデマなのでしょうか?

タクヤくん
タクヤくん
っていうか、打ち消されるならデモ曲作った意味ないねww

リアルタイムレコーディングの検証

DAWソフトのバウンス機能ではなく、リアルタイムで録音した音源だとどうなるかについても、合わせて検証してみました。

検証に用いたDAWソフトは「Studio One 4 prime 4.6.0」です。

studio-one-4-prime
  • リアルタイムバウンス機能を使ってバウンスすると音が変わるか?
  • ループバック機能を使って録音すると音が変わるか?

結果としては、いずれも音は変わりませんでした(位相反転で音が打ち消された)。

おそらく、他のDAWでも結果は同じになると思われます。

他のサイトで「ループバックで録音した音が違う」という内容を見かけましたが、もしかすると、オーディオインターフェイスかUSBでノイズが乗っているだけかもしれませんね。

② プラグインの出音を比較

同じプラグインをそれぞれのDAWソフトで立ち上げて、同じMIDIシーケンスを演奏した時の出音に違いがあるかを比較しました。

なお、意外と知らない人が多いですが、前提としてプラグインの出音は、同じDAWソフトであっても、演奏の度にわずかに音が変わるため、位相反転による確認は行わず、耳で聴いて違いを比較しました。

使用したプラグイン

KORG – MonoPoly VST (ソフトシンセ)

KORG Monopoly VST

各DAWの出音

それでは、各DAWソフトでのプラグインの出音の違いを聴き比べてみてください。

結果、それぞれの波形をパッと見ただけで違いが分かるレベルで、出音の音量感がDAWによってバラバラだったので、参考として音量のピーク値を記載しています。

タクヤくん
タクヤくん
あんまり違いが分からないんだけど・・。

Cubase(ピーク音量 -4.63db)
Ableton live(ピーク音量 -3.91db)
FL Studio(ピーク音量 -7.56db)
Studio One(ピーク音量 -4.72db)
Digital Performer(ピーク音量 -4.76db)

※Pro ToolsはAAX形式にしか対応しておらず、同じプラグインを読み込めないので対象外としています。

人は「大きい音」=「良い音」であると錯覚してしまうため、これらのサンプルから正確な「音質」を比較するのは難しいです。

また、同じMIDIデータを読み込んでいるとはいえ、MIDIのノートやベロシティの分解能がDAWソフトによって違うことも、演奏結果に微妙な違いを生んでいると思います。

さらには、パソコンやスマホで音を再生していることで、原音から劣化しますので、余計に比較が難しくなるでしょう。

これらを考慮しても、「このDAWソフトの音が良いな!」と思われたら、そのDAWを選んでいただくのも良いかもしれません。

ソフトシンセ+エフェクトで各DAWの出音を比較

次に、リバーブも足して再度同じように比較をしてみました。

使用したプラグイン
  • KORG MonoPoly VST(ソフトシンセ)
  • Lexicon PCM Native Chamber Reverb(エフェクトプラグイン)
比較検証に使用したプラグイン
Cubase(ピーク音量 -5.81db)
Ableton live(ピーク音量 -5.15db)
FL Studio(ピーク音量 -8.49db)
Studio One(ピーク音量 -6.35db)
Digital Performer(ピーク音量 -7.00db)

各DAWの出音を聴いた印象の評価を、まとめてみました。

各DAWの出音
Cubase・全体的にバランスが良い印象。
Ableton live・低域~中域が強く聴こえる印象。
FL Studio・低域、高域が強く聴こえる印象。
Studio One・高域が強く聴こえ、中低域は弱い印象。
Digital Performer・全体的にバランスが良い印象。

DTM部長
DTM部長
実際に聴き比べてみれば分かると思いますが、大きな差があるわけではないのでご安心を!

Cubaseに関しては、同じMIDIデータファイルを使用しましたが、細かい設定の違いなのか、ソフトシンセの発声感(音の伸び)がそもそも他と全然違っています。

また、エフェクトも全く同じパラメータでインサートでかけたのに、効きが弱かったです(設定値変えれば良いだけなので、それが悪いという訳ではないです)。

そこも考慮した上での評価としています。

③ パンニング音を比較

今度は、ハイハットのループを用意して、各DAWソフト上で、ステレオトラックの「パン」の設定を左右に動かしてみました。

各DAW上で、「センター、L最大値、R最大値」という順番でパンニングして録音した波形はこんな感じです。

パンを振った音の波形の比較結果。

Studio OneDigital PerformerCubaseでは、Rにパンを振ると、Lの音量が小さくなるだけで、Rの音量自体は変化しません。

一方、Ableton liveFL StudioProToolsでは、Rにパンを振ると、Lの音量が小さくなると同時に、Rの音量が大きくなるのです。

これはパンロウ(Pan Law)と呼ばれる設定値の違いによります。

この違いは、ミックス作業におけるステレオ感に大きな違いをもたらします。

Pan Law(パンロウ)値の違い

検証結果の通り、DAWによって、パンロウの初期設定値が違っているため、そのままミックスすると、2mixの音質に大きな違いが出てきます。

もちろん、モノラルトラックとして扱うことで、どのDAWでも同じような結果にすることは出来ますが、シンセなど元々ステレオで録音した音は、ステレオトラックのまま扱いますからね。

ステレオトラックのパンロウを設定変更出来るかどうかについて、DAWソフト毎の対応可否については、以下の通りです。

Studio One標準機能で変更不可。付属プラグイン「Dual pan」で変更可能。
Digital Performer標準機能で変更不可。
Cubase標準機能で変更可能。
Ableton live標準機能で変更不可。無償プラグイン「Pan law racks」で変更可能。
FL StudioCircularとTriangularの2択選択。
ProToolsステレオトラックで、LR個別にパンをコントロール出来る。
Logic標準機能で変更可能。

ただし、標準機能で変更不可のDAWソフトでも、外部プラグインを使用することで、任意のPan Law値を設定することが出来ます。

まとめ

様々な条件で、DAWソフトの音質比較検証を行いました。

検証結果をまとめると、以下の通りです。

  • DAWのバウンス音に関して、DAWソフトによる違いはない。
  • プラグインの出音は、DAWソフトによって変わる。ただし、そもそも演奏する度にも、音が変わる。
  • パンを振った時の出音はDAWソフトによって変わる。ただし、Pan lawの設定の違いによるもの。

バウンス音に関しては全く同じですし、プラグインの出音も驚愕するほどの違いは感じられなかったですね。

Pan lawもプラグインなどで対応出来ることを考えると、どのDAWソフトを選んでも間違いはないということです。

そこにこだわって時間を費やすよりも、さっさとDTMを初めて音作りやミックスにこだわった方がよっぽどプロへの近道だと思います。

という訳で、DAWソフトの選び方については、こちらの記事で詳しくまとめていますので、チェックしてみてください。

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