音楽制作において「ミックス」は、完成楽曲のクオリティを左右する大事な作業です。
そのため、ミックスのやり方は、正しく理解しておきたいところです。
しかし、実際に「ミックスって具体的に、何をすればよいの?」「そもそも、何のためにやるの?」という人は多いです。
そこで、DTM歴7年で楽曲リリースの経験もある現役トラックメイカーが、音楽制作におけるミックスのやり方を、初心者にも分かりやすく解説します。
Contents
良いミックスとは?
良いミックスとは、音の定位がしっかり整っていて、それぞれのパートがちゃんと聴こえている状態のことです。
また、バンドサウンドであれば、目の前で演奏しているかのような臨場感があると、より気持ち良いですし、どんな環境でもしっかりと音を鳴らすために音圧の調整も必要です。
なお、「そもそもミックスって何だ?」という人は、まずこちらの記事から読んで頂くことをおすすめします。
ミックスのやり方は?
- ボリューム(前後)
- パンニング(左右)
- 周波数(上下)
- エフェクト(臨場感)
- タイムライン(音圧)
それでは、それぞれの調整方法について解説していきます。
ボリューム
音量調整は、ミックスにおける一番の基本操作です。
フェーダーを上げ下げして、各トラックの音量を調節します。
自然界では、近くにあるものは音が大きく聞こえ、遠くにあるものは小さく聞こえますよね。
この効果を利用して、音の前後方向の定位を調整することができます。
例えば、ボーカルなど、一番近くで聴かせたいトラックは、音を大きくする感じですね。
ボリュームコントロールによって、前後方向の定位を調整する。
パンニング
「パンニング(Panning)」、「パンポット(Panpot)」とは、音の左右方向の定位を調整する機能のことです。
パンニング調整は、楽曲にステレオ感を持たせるために、最も効果のある方法です。
パンニングによって、左右方向の定位を調整する。
周波数
自然界では、周波数が高い音ほど、上から聞こえます。また、低い音ほど下から聞こえます。
この効果を利用して、音の上下方向の定位を調整することができます。
周波数によって、上下方向の定位を調整する。
ミックスの段階における、周波数の調整方法は、主に以下の2つです。
- イコライザーによる調整
- ピッチ変更による調整
① イコライザーによる調整
「イコライザー(Equalizer)」とは、特定の周波数帯域の音量を上げたり、下げたりするエフェクターのことです。
高音を強調して、音を上方向に移動させたり、逆に低音を強調して、下方向に移動させたりする訳です。
② ピッチ変更による調整
オーディオ素材自体のピッチ(音程)を上げたり、下げたりすることによって、周波数を上下させることができます。
多くのDAWは、標準機能として、トラックに読み込んだオーディオファイルのピッチを変更できる機能を持っています。
過度な調整をすると、原音からかけ離れた音になってしまうので、そんな時は素材自体を変更しましょう。
エフェクト
前提として、レコーディング素材自体の出音が良ければ、ミックス作業にエフェクトは、必ずしも必須とは限りません。
そのため、ミックスは基本的に、前述した、①ボリューム、②パンニング、③周波数を調整すれば完結します。
しかし、実態として、世の中のほとんどのプロデューサーはエフェクトを使用していますので、さらに気持ち良い楽曲に仕上げるために、以下のようなエフェクトを使用します。
空間系 (ディレイ、リバーブなど) | ・自然界にある残響を再現し、その場にいるかのような、臨場感を出すために使います。 |
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揺らし系 (コーラスなど) | ・ボーカルやギターにユニゾン効果を与えて、印象的に聴こえるようにするために使います。 |
歪み系 (サチュレーションなど) | ・テープレコーダーなどのアナログ機器で録音した時に生まれる歪みを再現するために使います。 |
ダイナミクス系 (コンプレッサー、リミッター、マキシマイザーなど) | ・音を大きくするために使います。 |
周波数調整系 (イコライザーなど) | ・被っている不要な音を削って、それぞれのトラックを聞こえやすくするために使います。 ・音の上下方向の定位を調整するために使います。 |
これらのエフェクトは「皆が使ってるから」といって、やみくもに使うのではなく、その前に、ちゃんと使う目的を理解しておきましょう。
空間系(ディレイ、リバーブなど)
自然界には、必ず「残響」が存在します。
そのため、自然界で音を鳴らせば、必ず残響の影響を受けることになります。
空間系エフェクトは、その残響をシミュレートしたエフェクトプラグインで、自然界で音を鳴らした時の残響を再現します。
揺らし系(コーラスなど)
コーラスは、「合唱」を意味しますが、その意味のとおり、音を揺らすことでユニゾン効果を得るエフェクトです。
これを活用することで、ボーカルが印象的に聴こえるようにします。
歪み系(サチュレーションなど)
主に、ポップスやロックなどのバンドサウンドにおいては、アナログ機材を使って演奏されることが多いですが、パソコン内部だけで制作を完結させてしまうと、どうしても無機質な印象になってしまいます。
そこで、アナログ機材が発生させる特有の歪みをシミュレートしたエフェクトプラグインを使って、アナログ機材の暖かみのあるサウンドを再現させます。
ダイナミクス系(コンプレッサー、リミッター、マキシマイザーなど)
楽曲全体の音圧を稼ぐためには、オーディオの波形から、ミックスダウンした時にクリップしそうな、突発的に音量が上がっている箇所のレベルを抑える必要があります。
それを簡単に実現してくれるのが、ダイナミクス系のエフェクトプラグインです。
しかし、掛け過ぎると、「ダイナミクス(音の強弱表現)」が失われてしまうため、バランスには注意しましょう。
周波数調整系(イコライザーなど)
イコライザーはミックス作業において、最も良く使われるエフェクトです。
音の定位を調整するだけでなく、トラック同士で音が被っている部分を削っていくのに、とても役立ちます。
・過度のエフェクトは楽曲全体への影響が大きいため注意しましょう。
・積極的に音を変化させるようなエフェクトは、基本的に、音作りの段階で使うべきです。
タイムライン
楽曲はタイムライン(時間軸)に沿って様々なパートの音が鳴ることによって構成されています。
そのため、複数の楽器が、全く同じタイミングで鳴ると、すぐにレベルオーバーしてしまいます。
そこで、少しだけタイミングをズラしてあげることで、それを防ぐことができます。
聴いても分からないくらい、違和感がない程度にズラすわけです。
音が被って埋もれてしまうのを防いで、個々のトラックの音がちゃんと聞こえるようにします。
まとめ
良いミックスとは、音の定位・臨場感・音圧が整った気持ちの良い2mixをつくることです。
そのために調整するパラメータは、以下の通りです。
- ボリューム(前後)
- パンニング(左右)
- 周波数(上下)
- エフェクト(臨場感)
- タイムライン(音圧)
実際にこれらをひとつずつチェックしていくのは、なかなか大変な作業ですが、ひとつずつ、感覚を覚えていきましょう。
慣れてくると、ミックスの前段階である音作りの作業において、ミックスを意識した音の作り方が分かってきますよ。