DTMにおいて、音作りやミックス時の音鳴りを確認するのに、「ヘッドホンとスピーカーって、どっちが良いの?」という疑問をお持ちの人へ。
これから始める場合、どちらを選んだら良いか分からないですよね。
そこで、DTM歴7年で国内外から楽曲リリース経験のあるトラックメイカーが、これまでの経験を踏まえて、理想的なモニター環境について解説します。
- ヘッドホンとスピーカーどっちが良い?
- それぞれのメリット・デメリットは?
- 理想的なモニター環境とは?
Contents
DTMにおけるモニター環境の役割とは?
ヘッドホンやモニタースピーカーなどのリスニング機器は、楽曲制作において必ず必要となります。
しかし、こんな疑問が浮かびます。
もちろん、シンセサイザーなどで音作りをするときにも必要ですが、最も必要となるのは、「ミックス」と呼ばれる作業を行うときです。
ミックスとは、録音やソフト音源によって作成した複数のトラックの音を調整して、一つに混ぜる事です。
ミックス作業におけるリスニング機器の役割は、主に以下の2つです。
- 音の定位をモニターする。
- 音の質感をモニターする。
① 音の定位をモニターする。
楽曲の各パートは全て同じ位置で鳴っている訳ではなく、それぞれ違う位置から聞こえますよね。
そのため、ミックス作業では、音の定位(音像の立体的な位置)を調整します。
正確に狙った位置に音を定位させるために、音の分離感が分かりやすく、正しく定位が判断できるリスニング機器を使用することが望ましいです。
② 音の質感をモニターする。
ミックス作業では、定位と合わせて音の質感を調整します。
例えば、バンドサウンドであれば、本当にバンドが演奏しているかのようなリアル感、臨場感を出すために、リバーブなどのプラグインエフェクトを使用して音を調整します。
安いイヤホンだと、リバーブの細かい掛かり具合を調整するためにパラメータをいじっても、どれだけ音質が変わったのか、その効果が分かりづらいです。
ヘッドホンとモニタースピーカーの違いは?
なぜなら、それぞれで聞こえ方の特性が異なるため、どちらで聴いてもバランスの良い音になるように調整する必要があるからです。
それでは、ヘッドホン・イヤホンとモニタースピーカーでは、聴こえ方がどのように異なるのか解説していきます。
- モニタースピーカーの特徴
- ヘッドホン・イヤホンの特徴
① モニタースピーカーの特徴
モニタースピーカーから音を聞いたとき、自分の前方で音が鳴っているように聞こえます。
このことを、「前方定位(ぜんぽうていい)」または「頭外定位(とうがいていい)」と言います。
各スピーカーから発せられる音は、耳に到達する前に、空気中で混ざり合っています。
この現象は「クロスフィード」と呼ばれ、左右のスピーカーからの少量の音が混ざり合い、ステレオイメージが少し狭くなることを意味します。
そのため、左で鳴らしたピアノやギターの音が、少し遅れて、右耳にも聞こえます。
② ヘッドホン・イヤホンの特徴
ヘッドホンで音楽を聴いているとき、頭の中で音が鳴っているように感じますよね。
このことを「頭内定位(とうないていい)」と言います。
各パートは、スピーカーを頭の真横に持ってきたかのような感じに定位します。
そのため、例えば、左で鳴らしたギターは、左耳だけにしか聞こえません。
ヘッドホン・イヤホンでは、スピーカーで音を聞いたときに比べて、ステレオイメージがめちゃくちゃ広がって聞こえます。
少し「パン」を左に振っただけで、すごく離れたように聞こえます。
ヘッドホンだけで定位の調整をすると、スピーカーで同じ音源を聴いたときに、ステレオイメージが狭く感じるという現象が起こりやすいです。
結局どっちが良いの?
という人のために、それぞれのメリット、デメリットをまとめてみました。
スピーカーのメリット・デメリット
- 定位が正確に確認できる
- 現場での音鳴りを確認できる
- 低域~超低域の確認が難しい
モニタースピーカーの最大のメリットは、正しい定位の確認ができる点です。
なぜなら、世の中のほとんどの楽曲は、スピーカーで聴いたときに気持ち良くなる定位に合わせて作られているからです。
また、それなりの音量が出せれば、ライブ会場やクラブなどの現場での出音がどうなるかも確認できます。
ただし、スペースが必要だったり、設置が面倒くさいところは、若干手間になります。
また、セッティングや部屋の構造によっても、音質が多少変わるので、その点は把握しておかなければなりません。
ヘッドホンのメリット・デメリット
- 周りを気にせず低音が出せる
- セッティングの必要がない
- 場所をとらない
- 定位の確認がしづらい
そもそもマンションなどで大きな音が出せなかったり、夜間しか作業ができない場合でも、周りを気にせず低音がモニターできるのは大きなメリットです。
また、セッティングも必要ないため、初心者であっても安定した音質で作業ができます。
ただし、前述した通り、定位の確認は難しくなるため、注意が必要です。
モニタースピーカーって普通のスピーカーと何が違うの?
一般的な鑑賞用のリスニング機器とモニター用のリスニング機器では、大きな違いがあります。
ここでは、スピーカーを例にして説明します。
- 一般的な鑑賞用スピーカーの特徴
- モニタースピーカーの特徴
① 一般的な鑑賞用スピーカーの特徴
- 気持ち良く聴こえるように味付けされた音質
音楽鑑賞用のスピーカーは、気持ち良く聴こえるように、周波数が調整されています。
すなわち、デフォルトでEQ(イコライジング)がかかっているということです。
特に、低域と高域を強調したドンシャリ型になっているものが多いです。
そのことを知らずに、音楽鑑賞用のスピーカーをフラットだと思って楽曲を制作すると、完成曲を他の環境で聞いたときに、「あれ?なんか低域と高域が物足りないな~」と感じることになります。
ただし、最初からそのことを理解してさえいれば、DTMで使用しても全く問題ありません。
むしろ、音楽鑑賞用のスピーカーの方が、音を作っていて気持ち良いです。
② モニタースピーカーの特徴
- 定位の分離感がはっきりしている
- 解像度が高いので細かい音質を見極められる
- フラットで原音に忠実な音
モニタースピーカーの一番のメリットは、音の定位が分かりやすいことです。各パートがどこから鳴っているかが分かりやすく、パンニング作業がスムーズです。
また、楽曲を正確にモニターするために専用で作られている機材ですので、当然のことながら解像度が高く、ミックス時のプラグインエフェクトのパラメータの細かい調整が行いやすいです。
EQ調整もなくフラットな出音なので、良くも悪くも楽曲そのままの音を確認できます。
モニタースピーカーのおすすめは?
DTMにおすすめのモニタースピーカーについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
ヘッドホンのおすすめは?
DTMにおすすめのモニターヘッドホンについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
まとめ
この記事の内容をまとめると、以下の通りです。
- モニター環境の役割は、音の定位・質感をチェックすること。
- スピーカーとヘッドホンは定位の聴こえ方が異なる。
- 両者の聴こえ方の違いを理解していれば、どちらを選んでも問題ない。
- 初心者には簡単に扱えるヘッドホンの方がオススメ。
それぞれの聴こえ方の違いをしっかりと理解していれば、ヘッドホン・スピーカーのどちらかだけでも、十分音楽制作は可能です。
しかし、例えば、ヘッドホンでキレイなバランスに聞こえていても、モニタスピーカーで「何かしっくり来ないな~」という場合、楽曲自体が、上手くミックスできていない可能性が高いです。
そのため、どちらのモニター環境においても、気持ちよく聴こえるようになって初めて、上手くできたといえます。
とりあえず、好きな方を選んで購入して、音をモニターすることに慣れていきましょう。
遠近定位を再現できるヘッドホンならどうでしょう。
歌手は目の前で歌いバック演奏は部屋中に音が広がります。
こんなヘッドホンを前からの平面波として聴けるようにして実現しました。
頭外定位を再現できるヘッドホン!それは素晴らしいですね。
気になって調べてみたのですが、SONYのMDR-DS7500のようなサラウンドヘッドホンもあるんですね~。
楽曲制作でも活躍できる感じなら、アリアリな選択肢ですね~!
環境的にスピーカーキツいですう;;
自分でミックスは諦めます…