「シンセよりもっと簡単な楽器で曲作りがしたい」、「音源がたくさん使えるループシンセが欲しい」という人へ。
そんな人におすすめなのが、ループシンセのサブスクリプションサービスである、Outputの「Arcade」です。
この記事では、Output「Arcade」について、その概要やメリットから、始め方・使い方まで徹底的に解説します。
この記事は、DTM歴7年で楽曲のリリース経験もある現役トラックメイカーDTM部長(@dtmbu)が書いています。
- Output「Arcade」とは?何ができる?
- Output「Arcade」の始め方や使い方は?
- Outputを使っているアーティストやおすすめのキットは?
Contents
Output「Arcade」とは?
「Arcade」とは、月額料金を支払うことによって、ソフト音源やループ音源が使えるサブスクリプションサービスです。
ロサンゼルスのOutput社が運営しているサービスで、2,000以上のソフト音源および30,000以上のループ音源から、好きなものをダウンロードして使うことができます。
また、Arcadeのプラグインは、「キット」と呼ばれるループシンセ型の分かりやすいユーザーインターフェースになっているため、シンセの操作が苦手な人でも、比較的簡単に使いこなすことができます。
項目 | 内容 |
---|---|
料金 | 10ドル(1,000円程度)/月 |
キット(ループシンセ)の種類 | 2,420 |
ループの数 | 38,092 |
※上記は、2020年5月時点の情報です。
Output「Arcade」を使うメリットは?
Output「Arcade」でどんなことができるのか、利用するメリットについて、もう少し具体的に解説します。
- 30日間無料で利用可能
- 楽器を弾けない人でも簡単に使える
- キット・ループが使い放題
① 30日間無料で利用可能
Arcadeは、最初の30日間無料でお試しすることができます。
もちろん、トライアル期間中も機能制限はなく、全ての機能をフルでお試しすることができます。
とりあえず使ってみて、自分に合っているかどうかを判断できるのは、とてもありがたいですよね。
② 楽器を弾けない人でも簡単に使える
Arcadeで使えるソフト音源は、「Kit(キット)」と呼ばれるループシンセになっており、ソフトシンセなどの一般的なプラグインとは少し違ったものになります。
「ループシンセ」、「ループ音源シンセ」とは、最初から音楽の形になっているループ音源を使って、再生する位置やピッチを変えたりすることで新しいサウンドを作り出せるソフトウェア楽器です。
そのため、操作を覚えるまでが大変なシンセと違って、初心者でも直感的に操作することができます。
③ キット・ループが使い放題
Arcadeには、2,000以上のキットと、30,000以上のループ音源が取り揃えられており、月額料金1,000円でそれらの全てを自由に利用することができます。
さらに、キットとループ音源は、常に新しいものが追加されていくので、いつでも最新のサウンドにアクセスすることができます。
一般的なサンプル音源のサブスクリプションサービスの場合、ひと月のダウンロード数には制限がある場合が多いですが、Arcadeは、いきなり数十GBのデータを入手することができます。
Output「Arcade」を使う上での注意点は?
次に、Output「Arcade」を実際に使ってみて感じた、注意すべき点について説明します。
- オーディオデータを入手できるわけではない
- Arcadeのループシンセしか使えない
① オーディオデータを入手できるわけではない
30,000以上のループ音源が使い放題のArcadeですが、これらはWavやmp3などのオーディオファイルとしてダウンロードすることができません。
Arcadeの専用ファイルとしてダウンロードされ、Arcadeプラグインのループシンセ用の素材としてのみ使用することができます。
② Arcadeのループシンセしか使えない
Output社には、「Exhale」や「Signal」など、ソフト音源からエフェクトまで色々な種類のプラグインがありますが、Arcadeで使えるキットは、全てループシンセとなっています。
そのため、あくまで「音を鳴らす楽器」として使うものであると理解しておく必要があります。
Outputを使用しているアーティストは?
では、具体的にどんなアーティストがArcadeを使っているのか、その傾向も気になりますよね。
Arcade自体を使用しているのかどうかは不明ですが、同じ設計思想のOutputプラグインを使用しているアーティストについて、日本国内でも有名な人を、いくつか公式サイトからピックアップして紹介します。
使用アーティスト① Zedd
Shawn Mendes、Katy Perry、Ariana Grande、Alessia Caraなどのメンバーとの共作でEDM界のスターに登り詰めた「Zedd(ゼッド)」は、Outputの「Substance」がお気に入りのようです。
使用アーティスト② Diplo
Beyoncé、Justin Bieber、Sia、Major Lazerなどとコラボする人気アーティストの「Diplo(ディプロ)」も積極的にOutputのプラグインを使っているようです。
使用アーティスト③ Lil Jon
日本のクラブで今だに永遠にリピートされる曲もある、有名ラッパーの「Lil Jon(リル・ジョン)」もOutputプロダクトを使用しているようです。
使用アーティスト④ TOKiMONSTA
LAのトラックメイカー「TOKiMONSTA」は、「Signal」がお気に入りのようです。
<参考>Output Arcade Artists Archive | https://output.com/artists
Output「Arcade」の評価は?
実際にArcadeを利用している日本のDTMerたちの反応も気になりますよね。
そこで、Twitterから利用者たちの声を拾ってみました。
Output「Arcade」の始め方は?
それでは、Arcadeで無料トライアルを始める方法と、最初にしておくべき設定について手順に沿って説明していきます。
- 無料トライアル登録
- アプリのインストールと起動
- コンテンツの保存先
① 無料トライアル登録
まず、ArcadeのWebサイトにアクセスします。
画面左下にある、[TRY IT FREE(無料でお試し)]をクリックします。
Step1:リンク先のページで、メールアドレスを入力して[NEXT]をクリックします。
ここには、「30日間は無料で利用できて、キャンセルはいつでもできますよー。」ということが書かれています。
Step2:次のページで、氏名・住所・パスワードなどのアカウント情報を入力します。
同じページの下部で、支払い方法(クレジットカード or PayPal)を入力して、[GET ARCADE]をクリックします。
なお、PayPalの場合は、[GET ARCADE]をクリックした後で、PayPalアカウントにログインして認証します。
入力内容に漏れがなければ、これで無料トライアルの登録が完了です。
② アプリのインストールと起動
続いてArcadeをDAW上で起動するためのアプリをダウンロードします。
ダウンロードしたzipファイルを解凍して.exeファイルを実行します。
インストールが完了したら、お使いのDAWを立ち上げて、外部プラグインを起動する時と同じ手順でArcadeを立ち上げます。
たとえば、Ableton liveの場合、Pluginフォルダの[Arcade]をMIDIトラックにドラッグ&ドロップすると起動します。
Arcadeプラグインが起動したら、先ほど作成したアカウントでログインします。
最初に、2つの質問に答えることで、レベルに応じた動画チュートリアルが表示されます。質問の内容は以下の通りです。
- あなたのDTMスキルは?
- 作りたいジャンルは?
動画チュートリアルを確認したら、いよいよArcadeを使う準備が完了です。
③ コンテンツの保存先設定
Arcadeでは、パソコンに保存済みのサンプルの保存場所は、デフォルトで以下のディレクトリ(C直下)になっています。
C:\ProgramData\Output\Arcade\Arcade Content
パソコンの保存先を変更するには、画面右上のメニューマーク(三点リーダー)をクリックして開くメニューバーから、[Account]をクリックします。
Accountメニューから、[Content Storage]をクリックします。
[BROWSE]をクリックして、コンテンツの保存先を(例えばDドライブなどに)変更します。
Output「Arcade」の使い方は?
Arcadeは、一般的なシンセと扱い方が違いますが、一度操作の流れを覚えてしまえば、とても簡単に操作できます。
それでは、Arcadeの操作方法について、手順にそって解説します。
- 音源の検索とダウンロード
- ループシンセの演奏
- ミキサーの操作
- マクロの操作と設定
- エフェクトの設定
- ループ音源の加工・編集
- 外部サンプルの読み込み
① 音源の検索とダウンロード
最初に、使う音源を選んでいきます。
以下の4つのメニューから、好きなものを選んで、音源を検索していきます。
メニュー | 内容 |
---|---|
Feed | おすすめや新規追加されたキットの一覧 |
Lines | 似た雰囲気のキットの集まり。 |
Kits | ループ音源がいくつかアサインされたループシンセ。 |
Loops | 単体のループ音源。Kitのキーボードにアサインすることができる。 |
たとえば、最も基本的なキットを探してみます。
画面左上のメニューから、[Browse]→[Kits]の順にクリックすると、キットの一覧画面が表示されます。
スピーカーマークをクリックして試聴しながら、気に入ったものをダウンロードします。
ダウンロードしたキットや、デフォルトでダウンロードされているものは、[PLAY]と表示されます。
② ループシンセの演奏
それでは、さっそくダウンロードしたキットを演奏してみましょう。
画面左上のメニューか、「Kits」でダウンロードしたキットの右側にある、[Play]をクリックします。
たとえば、ここでは「Berliner」というキットを使って演奏してみます。
Play画面では、白鍵を長押しすることで、その鍵盤にアサインされているループ音源を再生できます。
キットでは、全ての白鍵にそれぞれループ音源がアサインされています。
白鍵を長押しで音を出したまま、黒鍵を押すと、演奏音にエフェクトをかけることができます。
基本的には、「白鍵で演奏して、黒鍵でエフェクトをかける」というだけのシンプルな操作で音作りを行います。
③ ミキサーの操作
鍵盤の左端にあるミキサーアイコンをクリックすると、ミキサー画面が開きます。
「Mixer(ミキサー)」画面では、各鍵盤の音が個別のチャンネルへ出力されており、ボリュームやパンを調整することができます。
また、センドエフェクト(send1、send2)やマスターエフェクト(master)を選択して追加することができます。
Arcadeで使用可能なエフェクトは、以下の通りです。
エフェクト | 説明 |
---|---|
EMPTY | エフェクト無しにする場合に選択。 |
CHORUS | コーラス(揺らし系) |
COMPRESSOR | コンプレッサー(ダイナミクス系) |
MULTI TAPE DELAY | テープディレイ(空間系) |
DISTORTION BOX | ディストーション(歪み系) |
EQUALIZER | イコライザー(周波数調整) |
FILTER | フィルター |
LIMITER | リミッター(ダイナミクス系) |
LOFI | ビットクラッシャー(歪み系) |
PHASER | フェイザー(揺らし系) |
REVERB | リバーブ(空間系) |
④ マクロの操作と設定
次に、画面の左右にある「Macro(マクロ)」と呼ばれるパラメータを触ってみましょう。
「マクロ」とは、エフェクトなどのパラメータをいくつか同時に操作できるパラメータで、試しに操作してみると、積極的に音が変化することが分かります。
鍵盤の左端のマークをクリックしてマクロの設定画面を開くと、4つのマクロに設定されているパラメータを変更することができます。
⑤ エフェクトの設定
黒鍵にカーソルを合わせると表示される[Edit]をクリックすると、エフェクト設定画面が開きます。
たとえば、この画面の[resequence]というエフェクトは、ステップシーケンサーのように、波形の中から再生位置をいくつかピックアップして、ランダムな順番で再生するというエフェクトです。
Arcadeには、3種類のエフェクトがあります。それぞれの使い方は以下の通りです。
エフェクト | 説明 |
---|---|
PLAYHEAD | ループの再生位置や再生速度、逆再生などを設定するエフェクト。 |
REPEATER | サンプルをリピート再生するエフェクト。ディレイのように使う。 |
RESEQUENCE | 波形の中から再生位置をいくつかピックアップして、ランダムな順番で再生する。ステップシーケンサーのように使う。 |
⑥ ループ音源の加工・編集
白鍵にカーソルを合わせると表示される、[Edit]をクリックすると、その鍵盤にアサインされているループ音源をカスタマイズすることができます。
カスタマイズできるパラメータは、主に以下の通りです。
パラメータ | 説明 |
---|---|
FILTER | フィルターをかけて音質を変化させる。 |
SPEED | 再生速度の変更。 |
TUNE | ピッチの変更。 |
波形 | ループ音源の再生開始位置の変更。 |
⑦ 外部サンプルの読み込み
自分のサンプル音源をArcadeのループシンセで使うことができます。
[Browse]画面で、[Loops You Added]を開いて、使いたい音源データをドラッグ&ドロップするだけで、Arcadeで読み込み完了です。
または、[Play]画面を開いて、白鍵に直接ドラッグ&ドロップすることでアサインすることもできます。
Output「Arcade」のおすすめは?
Arcadeを使っていて、「これは使えるな~!」と思ったおすすめの楽器を、Lines単位で紹介します。
おすすめ① Hooked
普通のシンセではどうやっても作ることのできない、「生のボーカルサンプル」をふんだんに使って音作りができる、ループシンセのメリットを最大限に活かした楽器です。
おすすめ② Fields Of Sounds
こちらは、フィールドレコーディングによって録音された環境音を使った楽器です。
ループ音源自体が高音質でそのまま使えるクオリティなので、安心して使うことができます。
おすすめ③ Distant Voices
生のボーカルサンプルをベースにやまびこのような効果音を作れる楽器です。
こちらも普通のシンセでは作りえないサウンドを簡単に生み出すことができます。
まとめ
Output「Arcade」とは何か、そのメリット・デメリットや具体的な使い方について解説しました。
この記事で解説した内容のポイントをまとめると、以下の通りです。
- Arcadeとは、ソフト音源のサブスクリプションサービス。
- 2,000以上のキット、30,000以上のループ音源が使い放題。
- 月額1,000円程度から利用でき、いつでもキャンセルできる。
- 最初の30日間は無料でお試しできる。
Arcadeは、「シンセの操作は難しいからもっと簡単なものが欲しい人」や、「ループシンセで使える音源のバラエティを増やしたい人」などにピッタリのサービスです。
興味のある人は、ぜひ一度、無料トライアルからお試ししてみてください。
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