KV331 Audioのソフトシンセ「Synthmaster V2.9」についてレビューを行い、その音質・機能・CPU負荷などをチェックした結果についてシェアします。
また、具体的な使い方やデモ版を無料でお試しする方法も合わせて紹介します。
この記事は、DTM歴7年で楽曲のリリース経験もある現役トラックメイカーDTM部長(@dtmbu)が書いています。
- Synthmaster V2.9ってどんなシンセ?どこがスゴイの?
- 音質、機能、CPU負荷はどんな感じ?
Contents
Synthmaster V2.9とは?
「Synthmaster V2.9」とは、トルコのKV331 Audio(ケーブイ331オーディオ)社が開発しているソフトシンセです。
VA(バーチャルアナログ)と加算、ウェーブテーブル、FM、AM、リングモジュレーションまで使える、多機能な複合型のソフトシンセです。
複合型のオシレーターにより幅広い音作りができる多機能さを兼ね揃えているのにも関わらず、動作が軽く安定しているため、数々の賞を受賞するほど世界中で高く評価されているソフトシンセです。
また、一般的な複合型のソフトシンセの半額となる1万円代というリーズナブルな価格設定になっていることも人気の理由です。
スペック | 内容 |
---|---|
価格 | 10,655円 ※2020年5月時点(最新価格をチェック) |
発売時期 | 2017年 |
音源方式 | 複合型(VA、加算、FM、AM、ウェーブテーブル) |
プリセット音色 | 1,800以上 |
オシレータ | 2基。 100種類以上の波形 |
フィルター | 2基。 6種類 |
エフェクト | 搭載数:バス2、レイヤー2 11種類 |
なお、「シンセの方式の違いって何?」という人は、以下の記事を参考にしてみてください。
Synthmaster V2.9を使うメリットは?
それでは、Synthmaster V2.9の概要が分かったところで、このソフトシンセの魅力について、もう少し詳しく説明していきます。
- 幅広い音作りができる
- 負荷が軽く動作が安定している
- 複合型シンセなのに価格が安い
① 幅広い音作りができる
Synthmaster V2.9の最大のメリットは、オシレータの音源方式の種類が多く、幅広い音作りができることです。
VA(バーチャルアナログ)はもちろんのこと、ウェーブテーブル、加算、FM、AMなど、ほとんどのシンセサイズ方式が搭載されており、各エレメントをパッチで組むことができるセミモジュラータイプのシンセです。
また、ウェーブテーブル波形には、RolandやKORG、YAMAHA、Moog、Oberheimなどをモデリングした波形など、100種類以上の波形が用意されています。
② 負荷が軽く動作が安定している
一般的に、複合型のシンセは機能が多い分、負荷もそれなりに重くなる傾向があります。
しかし、Synthmaster V2.9は多機能な割に、思っているより負荷が軽く、動作が安定しています。
実際に、DAW上でプラグイン1台を演奏してみたときの負荷は、ほとんどが3%前後(重いプリセットだと10%程度)でした。
③ 複合型シンセなのに価格が安い
多機能で、動作も比較的軽いSynthmaster V2.9ですが、価格が1万円強と、案外安いです。
他の人気のあるシンセがほとんどが2万円以上なのに対して、半額近い価格で入手できるのは、とても魅力的ですよね。
多機能・動作安定・安いと3拍子揃っているソフトシンセなので、多くのメディアから受賞するほど、海外ではとても人気があります。
Synthmaster V2.9を使う上での注意点は?
次に、Synthmaster V2.9を使ってみて感じた、「ここはもうちょっとだな~」というポイントを説明します。
- GUIがちょっと寂しい
- モジュレーション操作が少し分かりづらい
① GUIがちょっと寂しい
機能的には申し分のないSynthmasterですが、GUIはかなりシンプルなデザインになっています。
スキンの変更は可能ですが、リアルタイムで波形が動くグラフィック等があるわけではないので、最新のソフトシンセに比べると、少し寂しい印象があります。
ただ、それも動作を軽くするために、あえてそういった仕様に仕上げているんだと思います。
② モジュレーション操作が少し分かりづらい
先ほどの話にもリンクするのですが、Synthmasterでモジュレーションをアサインするときに、画面右側にある[Matrix]を見ながらパラメータ設定していくのですが、若干やりづらい印象がありました。
というのも、全体的に色分けがハッキリしていないので、どこに何がアサインされているのかが、若干見えずらいです。
やはりどうしても、グラフィック面では他のシンセに劣ってしまいます。
Synthmaster V2.9の購入方法は?
トルコ発のKV331 AudioのプラグインであるSynthmasterを購入する方法は、以下の3パターンがあります。
- 公式サイト
- プラグイン販売代理店(Plugin Boutique)
- 日本の正規代理店(Sonicwire)
① 公式サイト
まずはKV331 Audioの公式サイトから購入する方法です。
価格は99ドル(約10,663円)ですが、デモを1回お試しすると20%OFFで購入することができるのでお得です。
※2020年5月時点の情報。
② プラグイン販売代理店(Plugin Boutique)
Plugin Boutiqueは、多くのプラグインを扱う販売代理店で、ここで購入したプラグインのライセンスはWebサイトで一括管理できるので、わざわざ公式サイトを経由せずにダウンロード&インストールができて楽チンです。
また、購入すると必ずポイントが貯まり、サンプルパックが無料で貰えるのでお得です。
なお、英語が苦手な人は、以下の記事でPlugin Boutiqueの登録方法から使い方までをまとめていますので、参考にしてください。
③ 日本の正規代理店(Sonicwire)
日本の正規代理店であるSonicwireから購入する方法です。
こちらで購入するメリットとして、日本語マニュアルが入手できます(PDF)。
割引などはありませんが、海外サイトを利用するのが不安な人でも、安心して利用できます。
Synthmaster V2.9のデモ版はある?
Synthmaster V2.9には、無料でお試しできるデモ版が用意されています。
デモ版で制限されている機能は、以下の通りです。
- プリセットの保存ができない。
- プリセットの数が少ない。
- 30分毎にプラグインの再起動が必要。
それでは、デモ版をお試しする方法を説明していきます。
- デモ版のダウンロードとインストール
- DAW上でプラグインを起動
① デモ版のダウンロードとインストール
まず、KV331 AudioのSynthmaster V2.9デモ版のダウンロードページにアクセスします。
それから、お使いのOSに合わせてデモ版をダウンロードします。
ダウンロードした.zipファイルを解凍し、.exeファイルを実行してインストールします。
② DAW上でプラグインを起動
インストールが完了したら、お使いのDAWを起動して、プラグインフォルダから「Synthmaster2」を起動します
なお、同時に「Synthmaster2FX」も追加されていますが、こちらはエフェクトとして使えるプラグインです。
このとき、プラグインフォルダにSynthmaster2が表示されていなかったり、上手く起動できない場合は、以下の記事を参考にして設定を見直してみてください。
Synthmaster V2.9の使い方は?
Synthmaster V2.9の使い方について、機能を紹介する程度で、なるべく簡単に説明します。
より詳細を知りたい人は、Synthmasterの公式マニュアル(英語)を参照ください。
- プリセットの選択
- 画面サイズとスキンの変更
- オシレーターの使い方
- フィルターの使い方
- エフェクトの使い方
- モジュレーションの使い方
① プリセットの選択
プリセットライブラリを開くには、画面左上の[BROWSE]をクリックします。
[Online]をクリックすれば、KV331 Audioのオンラインプリセットを選ぶこともできます(ちょっと重いです)。
また、他のシンセと同様に、タグで音色のタイプをソートしたり、キーワード検索することも可能です。
イニシャライズ
なお、イニシャライズ(パラメータ設定を初期化してデフォルト状態に戻す)は、プリセット名をクリックします。
開いたメニューから[Init Preset]をクリックすると、イニシャライズされて、ノコギリ派の音になります。
② 画面サイズとスキンの変更
Synthmasterには、6種類のスキンが用意されています。
変更するには、画面上の任意の場所で右クリックして開いたメニューから、[Change global skin]をクリックします。
そのあと、一度、右上の[×]をクリックして、シンセを閉じて再度立ち上げると、変更が反映されます。
③ オシレーターの使い方
Synthmaster V2.9には、4つの音源方式のオシレーターとオーディオ入力機能が搭載されています。
この種類の多さが、このシンセの最大の魅力です。
- Basic
- Additive(加算)
- Wavetable(ウェーブテーブル)
- Vector(線形加算)
- Audio In
Basic
Basicでは、アナログシンセの基本的な波形から、RolandやKORG、YAMAHA、Moog、Oberheimなどの実機の波形(1周期分)まで、100種類以上の波形が用意されています。
Additive(加算)
加算方式のオシレーターでは、サイン波だけでなくBasicと同様の波形を選んで合成することができるので、作れる音色は無限大です。
Wavetable(ウェーブテーブル)
Wavetableでは、1周期分の波形を選んでモーフィングします。
また、他の方式でも同様ですが、さらにFM・AM変調をかけることもできます。
Vector(線形加算)
Vectorは、方式としては、Additive(加算)と同じですが、4つの好きな波形を選んで、マトリックス上でブレンドを決めることができます。
Audio In
Audio Inはオシレーターではなく、外部オーディオを取り込んで、Synthmasterをいわゆるエフェクターのように扱うための機能です。
④ フィルターの使い方
フィルターは、特性(アルゴリズム)の違う6種類のタイプから選択できます。
Digital
いわゆる一般的なデジタルフィルターです。
VAnalog
アナログのラダーフィルターをモデリングしたフィルターです。
スロープが滑らかなので、フィルターの掛かり方がデジタルと変わります。
Ladder
VAnalogと似ていますが、こちらは、ゼロ・ディレイ・フィードバック・フィルターになっています。
Diode Ladder
TB303の実機に搭載されているラダーフィルターをモデリングしたフィルターです。
SVF
Oberheim SEMの実機に搭載されているフィルターをモデリングしたフィルターです。
Bite
KORG MS20の実機に搭載されているフィルターをモデリングしたフィルターです。
⑤ エフェクトの使い方
Synthmaster V2.9では、EQを含めて11種類のエフェクトを利用できます。
- 6 Band EQ
- Distortion
- LoFi
- Phaser
- Chorus
- Tremolo
- Ensemble
- Delay
- Reverb
- Compressor
- Vocoder
⑥ モジュレーションの使い方
オシレーターにある[Mod1]~[Mod4]は、FM、AM、リングモジュレーションを適用するためのモジュレーターです。
エンベロープ
エンベロープは、各オシレータごとに、4基ずつ搭載されています。
ADSRの4点を動かして設定するタイプの一般的なエンベロープです。
Multistage エンベロープ
こちらは、多段タイプのエンベロープで、最大16点まで表示して、自由にエンベロープを設定できます。
LFO
LFOは4基搭載されており、各オシレーター毎に2基づつ適用することができます。
モジュレーションのアサイン方法
パラメータにモジュレーションをアサインする方法を説明します。
アサインしたいパラメータを右クリックして、[Modulation Source]から適用するモジュレーションソースを選択します。
すると、画面右側の[Matrix]にソースが表示されるので、アサイン量を調整します。
ちなみに、アサインしたパラメータ(ここでいうCutoff)にカーソルを合わせると[↕]マークに変わって、アサイン量を調整できるのですが、なぜか上手く表示されない時があります。
まとめ
KV331 Audioのソフトシンセ「Synthmaster V2.9」について、そのメリット・デメリットから使い方までを解説しました。
この記事で解説した内容のポイントをまとめると、以下の通りです。
- Synthmaster V2.9は、複合型のセミモジュラー仕様のソフトシンセ。
- VA、加算、FM、AM、ウェーブテーブル、リングモジュレーションで幅広い音作りができる。
- 多機能なのに軽くて動作が安定している。
- 複合型シンセなのに価格がたったの1万円。
- グラフィック機能に期待してはいけない。
Synthmaster V2.9は、多機能・軽い・安いの三拍子が揃った、とても優れたソフトシンセです。
この記事のレビューを見れば、数々の賞を受賞しているほど、世界中で人気がある理由も納得できたかと思います。
ぜひ、興味があれば、購入を検討してみてください。
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