「Massive Xってどうなの?」「Massive XとMassiveって何が違うの?」ということが気になっている人へ。
Native Instruments社のソフトシンセ「Massive X」と「Massive」について、それぞれレビューを行い、音質・機能・CPU負荷など、両者の違いをまとめてみました。
これからMassiveシリーズの購入を検討されている人は、要チェックです。
この記事は、DTM歴7年で楽曲のリリース経験もある現役トラックメイカーDTM部長(@dtmbu)が書いています。
- Massive Xは何が良い?人気の理由は?
- Massive XとMassiveはどっちを買うべき?
- Massiveの音質やCPU負荷は?
Contents
Massive X、Massiveとは?
「Massive X(マッシブ・エックス)」とは、ドイツの人気プラグインメーカーNative Instruments社の開発するソフトシンセです。
ウェーブテーブル方式によるオシレーターと、自由自在にアサインできるモジュレーションによって、動きのある音を作るのが得意なシンセです。
世界中で大流行した「Massive」のDNAを引き継いで新しく開発されたのが「Massive X」で、仕様が似ているソフトシンセのSerumと並んで、とても人気のあるソフトシンセです。
スペック | 内容 |
---|---|
価格 | 26,800円 |
音源方式 | ウェーブテーブル方式 |
プリセット音色 | 580以上 |
オシレーター | 2個 ウェーブテーブル:170以上 |
フィルター | 9以上 |
エフェクト | 9以上 |
なお、ウェーブテーブル方式って何?という人は、まず以下の記事に目を通してもらうことをおすすめします。
Massive XとMassiveの違いは?
Native Instrumentsでは、「Massive X」と「Massive」の2種類のバージョンが販売されています。
これらは、単純なバージョン違いというよりも、むしろ別物というくらい、設計思想が変わっています。
という人のために、両者の違いについて説明します。
- カタログスペックを比較
- 見た目がオシャレなのは?
- 音質が良いのは?
- CPU負荷が軽いのは?
① カタログスペックを比較
まず、カタログスペックから見た、Massive XとMassiveの違いは、以下の通りです(要点だけ抜粋しています)。
スペック | Massive X | Massive |
---|---|---|
価格 | 26,800円 | 20,100円 |
プリセット音色 | 580 | 1,300 |
スキンの変更 | 6種類 | – |
オシレーター | 2個 ウェーブテーブル:170以上 | 3個 ウェーブテーブル:80以上 |
フィルター | 9 | 12 |
エフェクト | 9 | 9 |
② 見た目がオシャレなのは?
次に、カタログスペックからは分からない、非機能要件についても、比較していきましょう。
たとえば、見た目のオシャレさについては、人の感性なので、もちろん賛否両論あるとは思いますが、Massive Xの方がグラフィックがキレイでオシャレです。
また、スキンも6種類から選べるのに対して、Massiveは1種類のみです。
③ 音質が良いのは?
Massive XとMassiveの音質を比較してみました。
実際に聞き比べてみたところ、以下のような音質の違いがあることが分かりました。
- Massive X: 解像度が高い。高域が出ている。
- Massive: 低域が強い。
また、用意されているプリセット音色も、Massive Xが実験的な電子音楽的な音が多いのに対して、Massiveはゴリゴリのベース系の音が多い感じでした。
④ CPU負荷が軽いのは?
Massive XとMassiveでは、どちらが軽いのか、実際に負荷検証をしてみました。
実際にプラグイン1台を起動して、プリセットを変えながら演奏してみたときのCPU負荷の平均値は、以下の通りでした。
プラグイン | CPU負荷 |
---|---|
Massive X | 10%前後(重いとき20%以上) |
Massive | 5%以下(重いとき10%以上) |
動作の安定性の面では、Massiveに軍配が上がりました。
というのも、検証で使っている1時間くらいの間に、Massive Xは2回もクラッシュしてしまったのです(使用環境:Win10, Ableton Live 9.7.7)。
Massive X、Massiveを使うメリットは?
両者の違いが分かったところで、次にMassiveシリーズを使うメリットについて、もう少し掘り下げていきます。
- 動きのあるサウンドが作れる
- 音質・質感にこだわる人にピッタリ
- Massive Xのスキンがオシャレ
① 動きのあるサウンドが作れる
Massive X、Massiveの最大の特徴が、自由自在なモジュレーションにより、動きのある音が簡単に作れることです。
オシレータを含む、ほぼ全てのパラメータにエンベロープやLFOをアサインしてモジュレーションをかけることができます。
これにより、ワブルベースを始めとして、ウネウネと動きのある音を作ることができます。
② 音質・質感にこだわる人にピッタリ
先ほど説明したモジュレーションに加えて、Massive Xの登場により、音の解像度が上がり、音の質感をより細やかに表現できるようになりました。
そのため、IDMやエレクトロニックミュージックのジャンルで、シンセの質感にこだわりたい人にはピッタリのプラグインです。
③ Massive Xのスキンがオシャレ
先ほども説明しましたが、Massive Xの登場により、見た目のデザインがかなり進化しています。
スキンも6種類から選ぶことができますが、どれもかなりモダンでオシャレなので、「やってる感」が出ますね。
ライブセットなどで立ち上げていると、とてもカッコ良いですし、モチベーションも上がりますよね。
Massive X、Massiveを使う上での注意点は?
次に、Massive X、Massiveを購入する場合に、注意しておきたいポイントについて説明します。
- 使いこなすのが難しい
- Massive Xはまだちょっと動作が不安定
- Massive Xには日本語マニュアルがない
① 使いこなすのが難しい
Massive X、Massiveに共通して言えることですが、モジュレーションを使いこなすのがとても難しいです。
特に、シンセも触ったことのない初心者の場合は挫折する可能性が高いです。
また、同じ理由で、ポップスやアニソンなどメロディー重視のジャンルの人にも、あまりおすすめできないです。
② Massive Xはまだちょっと動作が不安定
2019年にリリースされたMassive Xは、設計が全く新しいために、まだちょっと動作不安定な部分があるようです。
たとえば、公式HPに、Logic10.5でMassive Xがクラッシュするという報告が挙がっていました。
この辺りは、ちょっと注意が必要ですね。
③ Massive Xには日本語マニュアルがない
Massive Xは日本語のマニュアルがまだありません(2020年5月時点)。
Native Instrumentsは本社がドイツであり、ターゲットとする客層も欧米が中心なので仕方ないことですね。
英語が苦手な人は、Massiveの日本語マニュアルがあるので、そちらを参考にして頂くか、体で覚えていくしかないですね。
Massive X、Massiveの評価は?
世間一般での評価がどんな感じなのかも、気になりますよね。
そこで、Twitterで少し調べてみました。
Massive X、Massiveを使っているアーティストは?
Massive X、Massiveを実際に使っているアーティストを紹介していきます。
自分の好きなアーティストが使っていたら、使いたくなりますよね。
Massiveの使用アーティスト
EDMを中心に、海外アーティスト329組がMassiveを使っている/使っていたとの情報を見つけました。
やはり、その知名度・人気ともにハンパではなさそうですね。
Martin Garrix、Deadmau5、Skrillex、Avicii、Hardwellなど、329組のアーティストが使っている(要約して抜粋)。
Equipboard – 329 Artists Use this
Massive Xの使用アーティスト
Massive Xはまだリリースから期間が経っていないこともあり、そこまで情報が無かったので、公式からネタを拾ってみました。
Massive Xデモ版のお試し方法は?
「さっそくデモ版を試してみたい!」という人のために、デモのお試し方法を紹介します。
ここでは、Massive Xのデモ版について紹介しますが、Massiveも流れは同じなので、参考にしてみてください。
- デモのダウンロードとインストール
- DAW上でMassive Xを起動
① デモのダウンロードとインストール
まず、Native InstrumentsのMassive Xのページにアクセスして、[デモ]をクリックします。
次に、メールアドレスを入力して[GET DOWNLOAD LINK]をクリックします。
すると、入力したメールアドレスにメールが届くので、本文にあるURLをクリックします。
ブラウザが起動してダウンロードページが開くので、お使いのOSに合ったインストーラーを選んでダウンロードします。
また、ライブラリデータも同様にダウンロードしておきます(プリセット音色を読み込むために必要です)。
ダウンロードした.zipファイルを解凍してインストールします。
次に、ライブラリデータも解凍して同様にインストールします。
② DAW上でMassive Xを起動
どちらもインストールが完了したら、お使いのDAWを立ち上げてプラグインを起動させます。
起動したら、[Demo]をクリックして、デモ・モードでスタートします。
このとき、もしMassive Xがメニューから選べなかったり、上手く起動しない場合は、以下の記事を参考にしてみてください。
Massive Xの使い方は?
「Massive Xって、実際どういう感じで使うの?」という人のために、実際の使い方について紹介します。
本気で解説すると、とんでもなく長くなってしまうので、サラっとポイントだけをまとめて解説します。
- プリセットの選択
- スキンの変更
- オシレーターの使い方
- フィルターの使い方
- エフェクトの使い方
- モジュレーションの使い方
① プリセットの選択
画面上部のウィンドウをクリックすると、プリセットが選択できます。
また、ウィンドウの右横の[△ ▽]で、ウィンドウを開かずに前後のプリセットに変えることもできます。
② スキンの変更
「Massive X」のロゴの右横にある、[▽]をクリックします。
[Theme]から、好きなスキンを選びます。
変更できるスキンのテーマは3種類と、それぞれのフラットモード(立体感なし)の計6種類です。
- Default(Normal/Flat)
- Dark(Normal/Flat)
- Light(Normal/Flat)
③ オシレーターの使い方
Massive Xには、2個のオシレーターが装備されています。
ノブを左に回すと矩形波(Pulse)、右に回すとノコギリ波(Saw)に近い波形に変化し、そのブレンドを決めることができます。
他にも、全部で10種類のモードがあります。
- Standard
- Bend
- Mirror
- Hardsync
- Wrap
- Formant
- ART
- Gorilla
- Random
- Jitter
④ フィルターの使い方
Massiveのフィルターは1個だけです。そのため、同じフィルターを各オシレータに適用します。
フィルター名をクリックすると、9種類のフィルターからタイプを選ぶことができます。
- Asimov
- Blue Monark
- Comb
- Creak
- Groian
- Scanner
- SVF
- SVF Parallel
- SVF Serial
⑤ エフェクトの使い方
Massiveのエフェクトは11種類あります。
このうち、[Utility]はフィルターとして使えますので、2個目のフィルターとして使うことができます。
- Anima
- Bit Crusher
- Utility
- Folder
- Freq Shifter
- Distortion
- OSC
- PM OSC
- Ring Mod
- Sample+Hold
- Track Delay
⑥ モジュレーションの使い方
Massive Xでは、モジュレーションソースとして、エンベロープ/LFOを9個まで使うことができます。
エンベロープは、通常のものと、エキサイターエンベロープというアタック感を調整するためのエンベロープの2種類があります。
LFOは、波形の形を選べる[Switcher LFO]と、ランダムに動せる[Ramdom LFO]の2種類があります。
エンベロープなら[E]を、LFOなら[L]を、アサインしたいパラメータにドラッグ&ドロップするだけでアサインできます。
最後に、Massive Xには、パフォーマー(Performer)と呼ばれるモジュレーションソースもあって、ここで自由に波形を描くこともできます。
まとめ
Massive X、Massiveのレビューや両者の違いについて、詳しく解説してみました。
この記事で解説した内容のポイントをまとめると、以下の通りです。
- Massve X、Massiveはウェーブテーブル方式のソフトシンセ。
- 自由自在なモジュレーションにより動きのある派手な音を作ることができる。
- Massive Xの方が新しく、音質が良いが、Massiveの方が軽くて動作も安定している。
- どちらも初心者には使いこなすのが難しい。
- Serumとよく比べられる。
Massive X、Massiveは、どちらも使いこなすのが難しいですが、慣れたら他のシンセでは作り得ないサウンドがどんどん作れるようになるので、強力な武器になるでしょう。
メロディー重視派であれば、そこまでこだわりは要らないかもしれませんが、音質や質感を重視する人には、ぜひおすすめしたい1台です。
なお、よく比較されるSerumも気になる人は、以下の記事もチェックしてみてください。
また、他にもおすすめが知りたい人は、こちらの記事もご覧になってみてください。
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